私の花図鑑     花の里日記  99.6.27(思い出)


    今日は久しぶりに雨が止んでいる。
来客が少ないので事務所の書類の整理をしている。
古い書類のなかに父の書き付けを見つけた。
登記書類の写しに園芸書の名前が記入されている。そういえば父も植物や石が好きだった。


  父の庭に植えた樹木の中で残っているのは高さが15M位になっているクルミの木がある。
都会のよごれた空気や排水をものともせず吸い取る様に枝をいっぱい伸ばし沢山の実をならせる。

人間はおじいさんとおばあさんまでは性格やしぐさなど覚えているけれど、その先の先祖は墓碑に記入されている名前が残るのみである。
死んでしまえば最後ですぐに忘れ去られるのみ。
いくら現状が苦しくてもわずかで短い人生である。
たのしく生きたいものである。
私の楽観的な性格は父の遺伝かもしれない。


  午後の4時を過ぎた。
花の里に行たくなったので、仕事を投げ出して急ぎ向かった。
長雨で川は増水しゴウゴウと音を立てている。
ホタルの出る時期なのに今日は見られないかもと思った。
花の里はシャスターデージーや雑草の姫ジョウオンの白い花盛りだ。
まるで白い野原だ。
姫ジョウオンの香りは甘酸っぱく強くあたり一面だ。
夕暮れなので白さが目立つ。
おぼろ月もぼんやり東の空にある。
白い蝶もやすらう時だ。


  山陽の空は雲ってドンヨリしているが山陰方面は晴れている。
夏至が過ぎてまもなくだから日が長く夕焼けは西北の十方山方面が赤い。
内田百聞の小説冥土のようにいつまでもほの明るい。
山には中腹に霧の雲が棚引いている。
ぼんやりテラスに座っているとヒグラシの声が聞える。
今年初めてで夏を予感させる。雨が続いたせいか、蛙は田んぼに戻りさざなみのように鳴いたり止めたりしている。
蛙が鳴き止んだ時は川の瀬を流れる音が聞えてくる。

  夜になり傍の田んぼでホタルが飛び交っている。
大水でも出てきた。
梅雨の夜のデイトだ。
川の増水で上へあがってきたらしい。
毎年見るがいつ見ても楽しい。
帰り道でも川のあちこちで飛んでいる。

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